Mixing Basics

MIXING
基礎ガイド

録った音を「曲」に仕上げるミキシングの基本

ミキシングの3本柱

① 音量バランス:フェーダーで各楽器の大小を調整。ここが8割。

② EQ:周波数のぶつかりを解消して、各楽器の居場所を作る。

③ コンプ:音量差を整えて、聴きやすくまとめる。

リバーブやディレイは「味付け」。まずは上の3つをマスターしよう。

ミキシングとは?

録音した素材を「1つの曲」に仕上げる工程

ミキシングの目的

複数のトラック(ボーカル、ギター、ベース、ドラム等)を、バランス良く聴きやすい1つのステレオ音源にまとめることです。

具体的にやること
  • 各楽器の音量バランスを調整
  • EQで周波数の棲み分けを整理
  • コンプで音量のばらつきを整える
  • パン(左右の定位)を決める
  • リバーブ等で空間を演出

大事な心構え

ミキシングは「足す」より「引く」。エフェクトを盛りすぎると音が濁る。「何もしない」が正解なこともある。

音量バランス

ミキシングの80%はここで決まる

フェーダーワーク

プラグインを触る前に、まずフェーダーだけで音量バランスを取る。これだけで曲の印象がガラッと変わる。

基本の手順
  • Step 1:全フェーダーを下げる
  • Step 2:ドラム(キック)から上げ始める
  • Step 3:ベース → ボーカル → その他の順で追加
  • Step 4:メーターがピークで-6dB前後になるように

パンニング(定位)

音の左右配置を決める。ステレオ感が出て、各楽器がぶつかりにくくなる。

基本の配置例
  • センター:ボーカル、キック、スネア、ベース
  • やや左右:ハイハット、タム、アコギ
  • 広め左右:エレキギター(L/R)、キーボード、コーラス
  • 全体:オーバーヘッド、リバーブ

プロのTIP

ギター2本ならL80% / R80%に振り分けると広がりが出る。ベースとキックは必ずセンターで。低音を左右に振ると音像がブレる。

EQ(イコライザー)

周波数の整理で音をスッキリさせる

周波数帯域の役割

帯域ガイド
  • 20-60Hz:サブベース。キックの「ドン」感。出しすぎ注意
  • 60-250Hz:低域。ベース、キックの芯。モコモコの原因帯域
  • 250-500Hz:中低域。温かみ。ここが多いと「箱っぽい」音に
  • 500Hz-2kHz:中域。ボーカルの存在感。ギターの芯
  • 2k-8kHz:中高域。抜け感、明瞭度。シャリシャリの原因
  • 8k-20kHz:高域。空気感、きらびやかさ。シンバルの「シャー」

EQの基本テクニック

引き算EQ
  • ハイパスフィルター:ボーカル・ギターの80Hz以下をカット(低音ゴロゴロ除去)
  • ローパスフィルター:ベース・キックの10kHz以上をカット(不要なノイズ除去)
  • 問題帯域のカット:「嫌な音」がする帯域を探して3-6dBカット
足し算EQ(控えめに)
  • ボーカルの抜け:3-5kHzを軽くブースト
  • キックのアタック:3-5kHzを軽くブースト
  • 空気感:10kHz以上をシェルフでふんわり持ち上げ

プロのTIP

「ブーストしたい」と思ったら、他のトラックをカットで対処できないか考える。全員がブーストしたら誰も目立たない。引き算で空間を作る。

コンプレッサー

音量差を整えて聴きやすくする

コンプの基本パラメータ

4つのつまみ
  • Threshold(スレッショルド):ここを超えた音が圧縮される。低いほどよく効く
  • Ratio(レシオ):圧縮の強さ。4:1なら、4dB超えた分が1dBに潰れる
  • Attack(アタック):圧縮開始までの時間。速いとアタック感が潰れる
  • Release(リリース):圧縮が解除される時間。曲のテンポに合わせる

楽器別の設定目安

設定例
  • ボーカル:Ratio 3:1〜4:1 / Attack 10-30ms / Release 100-200ms / GR -3〜-6dB
  • ドラムバス:Ratio 4:1 / Attack 10-20ms / Release テンポ合わせ / GR -3〜-6dB
  • ベース:Ratio 4:1〜6:1 / Attack 10-30ms / Release 100ms / GR -4〜-8dB
  • アコギ:Ratio 3:1 / Attack 20-40ms / Release 150ms / GR -2〜-4dB

※GR = Gain Reduction(どれだけ圧縮されてるかの目安)

プロのTIP

コンプを「効かせる」より「整える」感覚で。メーターが常に動いてるのはかけすぎ。ピーク時だけ-3〜-6dB動くくらいがちょうどいい。

リバーブ & ディレイ

空間を演出する「味付け」エフェクト

リバーブの種類

タイプ別の特徴
  • Room:小さな部屋。タイト。ドラムに使いやすい
  • Plate:人工的だが滑らか。ボーカルの定番
  • Hall:大きな空間。オーケストラ、バラード向き
  • Chamber:温かみのある響き。汎用的

リバーブの設定

主なパラメータ
  • Pre-delay:原音とリバーブの間隔。20-50msで言葉の明瞭度UP
  • Decay / RT60:残響の長さ。1-2秒が使いやすい
  • Wet/Dry:かかり具合。Sendで使うなら100% Wet
  • Damping:高域の減衰。上げると暗く自然な響きに

ディレイ

やまびこのように音を繰り返す。リバーブより「はっきりした」空間感。

設定例
  • ショート(50-100ms):ダブリング効果。音を太くする
  • テンポ同期(1/4, 1/8):リズムに合った広がり感
  • ピンポン:左右に跳ねるディレイ。ステレオ感UP

プロのTIP

リバーブは「かかってるかな?」くらいがベスト。オフにした時に「あ、寂しい」と思う程度。見えないところで効いてるのが理想。

ミキシングの順序

迷わないための基本フロー

推奨の進め方

ステップバイステップ
  • Step 1:整理 - トラックの名前・色分け・グループ化
  • Step 2:ゲインステージング - 各トラックのピークを-6〜-10dBに揃える
  • Step 3:フェーダーバランス - プラグインなしで音量調整
  • Step 4:パンニング - 左右の配置を決める
  • Step 5:EQ - 周波数の整理(引き算メイン)
  • Step 6:コンプ - 音量差を整える
  • Step 7:空間系 - リバーブ・ディレイで味付け
  • Step 8:最終調整 - 全体を聴いて微調整

プロのTIP

1時間ごとに5分の休憩を取ろう。耳が疲れると判断力が落ちる。翌日に聴き直すと「あれ?」と思うことが減る。

よくある失敗

初心者がハマりがちなポイント

NG集
  • 音量上げすぎ:マスターがクリップ。-6dBくらいの余裕を
  • 低音出しすぎ:スマホや車で聴くとモコモコに
  • EQブーストしすぎ:カットで対処できないか考える
  • リバーブかけすぎ:抜けが悪くなる。薄味で
  • ソロで音作り:他の楽器と一緒に聴いて判断
  • ヘッドホンだけで判断:スピーカーでもチェック
  • 長時間作業:耳が疲れて判断が鈍る。休憩大事

最強の確認方法

スマホのスピーカーで聴いてみよう。大半のリスナーはここで聴く。ここでバランスが取れてれば、大体どこでも大丈夫。

リファレンス曲を使おう

プロの音を参考にする

リファレンスとは

自分の目指す音に近いプロの楽曲をDAWに読み込んで、音量やバランスを比較しながらミックスする手法。これがないと迷走しがち。

やり方
  • 好きなアーティストの曲をDAWに読み込む
  • 自分のミックスと同じ音量に揃える(重要!)
  • A/B切り替えしながら比較
  • 「低音が多い」「ボーカル小さい」など気づきをメモ

プロのTIP

リファレンスは「答え合わせ」。最初からプロと同じにはならないけど、方向性が大きくズレることを防げる。3曲くらい用意しておくとベスト。